クレー射撃のオドロキの瞬間視

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NHKの「アインシュタインの眼」。これはハイスピードカメラを利用して驚くべき方向からいろんな分野を解析してくれる。先日も私の尊敬すべき神保彰のドラム教室だったのでうれしかった!
さて今回はクレー射撃である。この中で興味深い眼科的な話が出てきたので紹介したい。

 

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取り上げられたのは北京五輪4位の中山選手である。
クレーが飛び出してから0.6秒で撃ち落とすらしい。距離は約35m。これだけの短時間で反応して引き金を引くわけだから視覚の能力がずば抜けて優れているのでは?と検査が始まった。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAスポーツ選手に必須の「動体視力」。これはスクリーンを高速で横に移動する指標を認識する能力である。光の中にはおなじみランドルト環があり、切れ目の方向が分かったらスイッチを押す。高速のボールをバットではじき返す野球では、一流選手はこの能力が優れているらしい。

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ところが彼女はごく平凡な結果で、あまり動体視力が良いとは言えなかった。これは意外だ!

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次に「瞬間視」。これはほんの一瞬だけ指標(6桁の数字)を表示させて読み取れるかどうかを試す検査だ。まずは0.1秒だけ表示。

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彼女は楽々と6桁の数字を言い当てた。次に0.01秒だけ表示させても正解したのだ。これにはオドロキである。私は0.1秒の段階でギブアップ!

専門家に寄れば
「数字を1個ずつ注視していたらとても間に合わない。全体をぼんやりと眺めて全体を一つの画像として記憶し、それを改めて処理して数字を認識している。彼女はその処理速度がとんでもなく速い」
とのこと。この話を聞いて思い当たるのは、デジカメの画像処理エンジンだ。私のEOSでは「DIGIC4」というが、彼女はまさにこれと同じような演算処理を瞬時に行っているのだろう。

クレーが飛び出した瞬間の彼女の目の動きをハイスピードで解析していたがそれを証明していた。飛び出したクレーを眼球がずーっと追尾していって引き金を引いているのではなく、クレーが出た!と視野の中で見えた瞬間に引き金を引き始めているのだった。実際に眼球が動いてクレーを視野の中心に捉えた時点ではすでに弾が着弾しているのである。これには驚いた。

眼球の構造として、網膜の一番中心(専門的には中心窩という)だけ極めて感度が良く作ってあり、中心を少しでも外れると極端に感度が落ちてしまうのである。彼女はその中心以外で捉えたターゲットに対して正確に位置を把握することができるらしい。我々からすると驚異的な能力である。今度の五輪ではクレー射撃にも注目!